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2008年12月14日 (日)

『肉体の悪魔』ラディゲ

内容(「BOOK」データベースより)
  第一次大戦下のフランス。パリの学校に通う15歳の「僕」は、ある日、19歳の美しい人妻マルトと出会う。二人は年齢の差を超えて愛し合い、マルトの新居でともに過ごすようになる。やがてマルトの妊娠が判明したことから、二人の愛は破滅に向かって進んでいく…。

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僅か20歳で夭折してしまったフランスの天才レーモン・ラディゲ10代のデビュー作です。

『肉体の悪魔』については冒頭に出てくる比喩が内容を如実に物語っています。

 僕は夢見るようなタイプではまったくなかった。なんでも簡単に信じるほかのみんなと違って、彼らには手の届かないものに見えることが、僕にはありのままの現実に見えた。猫がガラスケースごしに見ているチーズのようなものだ。だが、チーズは見えているが、ガラスの壁も存在している。
 ガラスが割れれば、猫はその隙につけいってチーズをいただくだろう。たとえ、自分の飼い主がガラスを割り、指を切って苦しんでいたとしても。

これだけ読むと上手い言い回しだなくらいにしか感じないかも知れませんが、最後まで読み通した後ここへ戻ってくると、ラディゲとは恐ろしい才能の持ち主だったんだと改めて思わされます。「僕」「マルト」「ジャック」の関係性も含めて時代の混乱を捉えています。

10代で年上の人妻と恋仲になったエピソードはラディゲ自身の体験です。しかし単に自分の経験を扇情的に綴っただけのポルノ小説崩れには決してなりません。語り手である「僕」は悪魔に取り憑かれたようにマルトとの恋に溺れ、エゴイズムから醜態を晒し自分も周りも傷つけますが、同時に冷徹に恋の行方や終わりを眺める傍観者としての視点も持ち合わせています。それがために単なる体験小説とは別次元で成立する作品となっています。

外科医が巧みなメス捌きで人の身体を切り刻むように、ラディゲは人間心理を切り開いていきます。読者も所々に思い当たったり、共感できたりする箇所が見つけられるはずです。この洞察力や慧眼は無駄に齢を重ねただけの人間には100まで生きても得られないでしょう。

ラディゲは腸チフスにより20歳で亡くなりましたが、それは彼が常人の何倍もの速度で命を燃やしたからにほかなりません。

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