『夜ふかし屋敷のしのび足』コニス・リトル
内容紹介
ホテル暮らしをしているわたしに、友人のセルマが助けを求めてきた。離婚調停中の夫の手に、別の男性 に出したラブレターが渡ってしまった。ついては偽メイドとして夫の屋敷にもぐりこみ、ラブレターを奪い返してきてほしいという。首尾よく屋敷に入ったはい いものの、慣れない家事や謎めいた住人に翻弄され続けるわたし。そのうえ殺人事件まで起きて……。コミカルなミステリ! 解説=大津波悦子
1930年代くらいのアメリカを舞台にしたコミカルなユーモア・ミステリ。
資産家の娘で何不自由ないホテル住まいをしていた主人公の許へ友人のセルマがやって来て、離婚調停中の夫から別の男性宛に書いたラブレターを盗み出して欲しいと依頼される。このままでは扶養費が途方もなく少ない額しか貰えないと言うのだ。
弱みを握られている主人公は半ば強制的にメイドとしてバートン家へ送り込まれるが、そこは蝶よ花よと育てられた彼女。家事なんて一切やったことない。掃除 と言えば羽根ばたきをパタパタやって終わり。それで前から居た使用人に小言を言われるとヘソ曲げてしまうんだから逆ギレも良いところ。
そんなこんなしてるうちに屋敷の主人であるアランの腹違いの兄ジョージが射殺されてしまう。その犯人に心当たりのある素振りを見せた妹フランシスも同じように殺された。
果たして二人を殺した犯人は誰なのか。そして彼女のメイド業は上手く行くのか。
といった感じの話です。他にもアランの弟、ロスのヘソクリが消えたり屋敷には居ないはずの小動物の足跡が残ってたりと、細かい謎がチラホラ。
常識知らずで使用人としては態度のデカイ主人公と周囲の人々との会話がテンポ良く物語を進める。
資産家の骨肉の争いだの、家族の不和だのといった問題を取り扱う以前――「あらやだ。殺人」と言ってたころの『家政婦は見た』シリーズに近い雰囲気。あちらは家政婦として仕事してるが、こちらの主人公はハッキリ言って役立たず。むしろ仕事を増やしてる気が……。
巻末の解説にも書かれてるが日本で一般的にイメージするメイド服は本来お茶の時間用の服装であり、普段の仕事で着る物ではない。あんな格好で炊事洗濯してたら邪魔でしょう。気合いを入れてメイド服で登場した主人公にバートン家が目を丸くしたのは当然。
そこら辺の詳しい参考文献として解説では『召使いたちの大英帝国』が挙げられ、メイドと主人の正当なロマンス物としては漫画『エマ』が紹介されている。
真剣に謎を解きながら読むというより、コミカルな流れに乗って雰囲気を楽しむ作品。
- 三橋 智子
- 東京創元社
- 840円
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