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2008年8月28日 (木)

『アラバスター』手塚治虫

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■内容紹介■
裏切った女へ復讐するためにあらわれた、透明な皮膚をもつ怪人アラバスター! 彼は、この世の見せかけの美しさを憎み、透明少女亜美や、不良少年ゲンとともに、社会に戦いをいどんだ!

アラバスター (1) (秋田文庫―The best story by Osamu Tezuka) アラバスター (1) (秋田文庫―The best story by Osamu Tezuka)

著者:手塚 治虫
販売元:秋田書店
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手塚治虫が最も嫌い、各所で否定的なコメントを繰り返した漫画。これほど徹底して疎まれた作品は他にないんじゃないだろうか。

江戸川乱歩の『淫獣』や『一寸法師』のようなグロテスクで淫靡な物語を書こうとしたら、やたら暗くてニヒルな救いの欠片も無い作品になってしまったとのこと。確かにラスト誰も救われない、一筋の光明も見えない閉じ方はヒューマニストとしての手塚治虫しか知らない人には衝撃的かも。

それだけ作者に嫌われた作品だが、じゃあ面白くないのかと言えば、そんなことはない。秋田文庫から全二巻で出てるが、一巻を読んだら二巻も読まずにはいられなくさせる引きの上手さは流石。

ショパンも幻想即興曲が気に入らず生前はお蔵入り、自分の死後には楽譜を燃やしてくれるよう弟子に頼む念の入りようだったから、得てして天才とは自分のことが最も分からない人種なのかもしれない。

美を見せかけのものと否定し破壊しつくそうとするアラバスターだが、実は彼こそ最も美に固執していたのだろう。それを看破されたとき彼は何を思っただろうか。

アラバスターことジェームズ・ブロックが受けた黒人差別の話かと思いきや、それだけに収まらず世に蔓延る様々な差別を槍玉に挙げていく。これは古典作品の復古という名目だから出版できるが、現代の作家がリアルタイムで書いたら口喧しい人権屋の抗議で打ち切られるかも。

アラバスターは世を騒がせる悪人だが不思議と読み手を引き付ける。これが本当のダーク・ヒーローだ。

前に『バンパイヤ』で紹介した間久部緑郎が今作では“ロック・ホーム”と名乗って登場する。手塚治虫が漫画・アニメの世界に残した功罪は数え切れないが、その中にこのスター・システムを挙げる声は多い。

CLAMP作品の読者には馴染み深いシステムだが、同じ作者の別の作品に違う作品では主役を張った人物がカタキや端役で登場することを指す。キャラクターを一個の役者と考える方法だ。間久部緑郎は犯罪者、ロック・ホームはFBI捜査官という正反対の役割だが、その倒錯した人間性は正しく継承されている。

ダークな作品にも免疫のある方は是非一読していただきたい。

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